脊柱管狭窄症についての考察と情報
考察)
脊柱管狭窄症の本態である黄色靭帯や椎間関節の肥厚に手技的な介入のできる可能性は低い(禁忌症に本症の入っていることもある)。
整形外科で脊柱管狭窄症の診断が出ても、馬尾障害(排尿のトラブルなど)などの重篤な症状の出ていないケースでは、
その他の症状との鑑別が必要。
55歳を超えると何らかの画像上の異常所見はみられる可能性が高くなるが、それがそのまま痛みの原因かどうかは分らない。
手術後に痛みの改善のない方も少なくない。
その場合、痛みの原因はどこにあったのか?
画像で見えるものと見えないものがある。
画像で見えないもの(たとえば、筋肉の過緊張状態)については、触診や可動域検査が必要。
手技的なアプローチの可能性について)
脊柱管狭窄症という診断の出るような不良な脊柱・骨盤の構造の問題点があるはずで、
必ずしも黄色靭帯や椎間関節の肥厚(脊柱管狭窄症の診断のでる要素)が直ちに痛みを作り出しているわけではないと考えられる。
次のような部分に対して施療して、症状の消失の出るケースがある。
この場合、多くが一側の下肢痛で、両側の場合は施術の難易度が倍増。
・股関節の可動域制限や回内足など立位における状態の改善
・歩行における問題点の改善(間欠性跛行のある場合)
・関連する筋肉の調整・・・中殿筋、大腿筋膜張筋、大腰筋など
・内臓の施療・・・腸間膜や脈管系その他の刺激により、筋肉の異常の解決することがある
・動きなどで椎間孔の狭窄の発生するケースでは、下部腰椎の不良アライメントに対して施術
整形外科的な情報)
・腰椎部分で神経が圧迫されている状態。
・55歳以上の方に多い
・もともと脊柱管が狭い人に脊椎症や椎間板症、脊椎すべり症などの加齢に伴う変性が加わると脊柱管狭窄症の症状が出やすくなる。
・脊柱管が狭くなると圧迫によって神経に栄養を送っている髄液や血液の流れが阻害され、神経に栄養障害が出る。
・症状:痛み、しびれ、間欠性跛行、直腸や膀胱の機能障害など
・圧迫を取り除いて髄液や血液の流れをよくすることが必要
(分類)
馬尾型
・脊柱管の中を通る脊髄神経は腰椎1番あたりまで伸び、そこから下は馬の尻尾のような神経の束(馬尾)になっている。
馬尾型は、脊柱管が狭くなることによって馬尾が圧迫を受けている状態で、神経根型よりも症状が重くなる。
・ 両脚のしびれや麻痺が広範囲に起きる。下肢の脱力感。
・膀胱や直腸の働きにも関係しているため排尿・ 排便の異常。会陰部のほてりや異常感覚。男性では異常な勃起。
・変性すべり症があると起こりやすい。
神経根型:
・椎間孔(椎骨と椎骨の神経の出ていく空間)の神経の根元を神経根と呼ぶ。
この神経根が圧迫を受けるケースを神経根型と言う。左右両側に起こることは少なく、多くは片側だけが圧迫される。
・神経に沿って腰から脚にかけて痛みやしびれ。
・腰を反ると症状が悪化。前屈すると症状が楽になる。
・腰部脊椎症や脊椎分離すべり症があると起こりやすい。
混合型
・神経根型と馬尾型の合併型。馬尾と神経根の両方が圧迫を受けるタイプ。神経根の圧迫による痛みやしびれ、馬尾の圧迫による異常感覚などが起こる。
・神経根型と馬尾型の両方の症状が現れる。
(症状)
・間欠跛行・・・しばらく歩くと脚が痛くなったり、しびれや脱力感が起こって歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになる、という状態のこと。軽症の人は10分程度は歩けますが、重症の場合は1~2分で、すぐに痛みやしびれで歩けなくなってしまいます。
歩くことによって脊柱管が動的に動き、脊柱管が狭くなり、神経への圧迫がより強くなるためこの症状が出る。しゃがんだりして前かがみになると脊柱管が広がるので、またしばらく歩けるようになる。
※間欠跛行は、脚の動脈硬化である閉塞性動脈硬化症でも起こる⇒(鑑別)この場合は立ったまま休んでも回復する(前かがみにならなくても良い)
・自転車はいくらでも乗れる
・体を前に曲げると楽で、後ろに反らすと痛みやしびれが増す。
(検査)
身体所見(曲げ反らしでの痛みの状況)、神経反射、知覚異常の有無、筋力など~症状の現れ方によって、どの部位が障害されているかを推測することが出来る。
原因
・黄色靭帯の肥厚
・椎間関節の肥厚
・先天的に脊柱管が狭い場合
椎間孔狭窄症)
脊柱管狭窄症の診断に含まれるためか、この診断名が病院で出ているケースが少ないようだ。
しかし、手技療法ではこの状態を考えて施術することが少なくない。
ケンプテスト(痛い側の脚後面を手で下へたどっていく)をすると、痛みの悪化。
椎間板ヘルニアや筋筋膜性腰痛などとの鑑別が必要。
(症状)
・加齢による椎間孔の減少で神経根を圧迫。
・姿勢や骨棘によるものもある。55歳以上で多い症状。
・体を後ろに反らすと痛みが増す。ケンプテスト陽性。
施術例と考察)
・骨盤や腰椎に対する矯正・モビリゼーション
・筋肉や末梢神経の調整
一側の下肢痛の場合、よい確率で改善。
レントゲン(正面像)では、L5の傾きが見られる。
発育性脊柱管狭窄症)
・これにより、僅かな椎間板の膨隆でも神経症状が強く出ることがある。
⇒画像所見と患者の神経所見が一致しない
・発育性脊柱管狭窄症と椎間板症の合併症の可能性を考慮
・アプローチ:痛みの出ない範囲でEⅩ(脊柱管の内圧を下げる) |