坐骨神経痛について

坐骨神経痛(腰下肢痛)について・・腰やお尻、太もも、ふくらはぎ、足にひどい痛み
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症例から。
年初、腰下肢痛(両側外側後面の下肢痛と腰椎周辺の痛み、脚に力が入らず歩きにくい)のある60代女性が紹介で来られた。
病院では、すべり症と脊柱菅狭窄症とがあると言われていて、治療は薬(トラムセット)とブロック注射。
別の病院にも行ったところ、けん引と電気治療とウォータベッド。
それらはとくに治療というより、少し時間をやり過ごしているようなかんじ・・
本当に病院で治療するなら手術かと。
状態ですが、腰椎4番が前にズレています(前方すべり)。
問題は、この重症度と手技療法の適応と手術の可否の判断です。
画像を見た感じはそれ程でしたが、症状が重症で、ちょっと(治せるかどうか)微妙な感じに思った。
で、困った時のカイロ師匠のセカンドオピニオン。
カイロプラクティックの師匠のMRI画像の見立ては次のようなものだった・・
「これは、数回施術してダメなら、手術かな。今のすべり症の手術は、かなり予後がいい。今60歳なので、いまオペした方が患者さんにとってラクと思う。プロ野球選手も高校球児も何人もすべりで手術してもらったことあるけど、早期に復帰出来ているよ」
なるほど、です。
このような情報・ニュアンスが現場ではとても意味あるんですが、それは深い経験値や考察が背景にないとなかなか出てこない。
すべり症や分離症その他、代替医療のセラピストのよく言うのは、「それは痛みの原因ではない!筋肉が痛みの原因だから筋肉をうまくリリースせよ!」のような事です。
ここらあたりは専門の医師に聞いても、100%の答えが返ってこないまだよく分からない部分でもあります。
ただ言えるのは、すべり症があるという不安的な腰椎の状況とそれに付随するだろう筋肉その他代償は色んな所に起こっているだろうという事。
だから、手術して痛みがとれる事もあるし、とれないこともある。
神経に触れるかどうかぐらいの椎間板ヘルニアを手術して痛みがとれなくても、そりゃそうだと思えるし。
この方の結果ですが、本人いわく1回目施術のあと痛みが6割減。
2回のあと痛みなくなり「もう行かなくても良いですかー」
しかし、3回目以降も来てもらっています。
なぜなら、痛みがなくなったと言っても、ギリギリでなくなっている綱渡り状態だからです。
もっとセーフティゾーンまで持っていっておかないとちょっとした事で痛み再発するでしょう。
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坐骨神経痛は下半身のおもに後ろ側に出る大変つらい痛みです。
私達セラピストとしては、どこの場所にどのような変化をうながせば痛みが消えるのかを検査して特定していく必要があります。
なんとなく「坐骨神経痛にはこれだ!」のような治療法はありません。
多数の要素からの鑑別が必要です。
鑑別検査として、少なくとも次のようなケースは想定し除外していきます。
もちろん、病院の検査でないとまったく分からないものもあります。
確定診断は病院の画像だけれども、徒手検査や問診であたりのつくものもあります。私から病院に送って画像検査してもらった場合、8割ぐらいで想定したことになっています。(それだけ徒手検査と問診が大切という事です)
脊柱菅狭窄症
椎間板ヘルニア
すべり症
分離症
椎間孔狭窄症
梨状筋症候群
腰椎部の脊椎炎
脊椎骨折
坐骨神経、腰部、骨盤の腫瘍
坐骨神経痛と言っても、このような種類(原因疾患)があります。
これを区別して、どのようなもので・どこで・坐骨神経がやられているから、このテクニックを選択する/あるいは手技療法では無理だから病院にお任せする・・そのような道すじになっていきます。
この鑑別なしに治療は出来ません。
(いや出来ますがその場合、当たるかどうか分からない当て物をしている感じ)
また次のような坐骨神経痛に似た症状を出すものがあります。
この場合坐骨神経は直接関係なく、治す対象が異なります。
坐骨神経痛の診断が出ていても、誤診と思われるケースは多く、実際臨床的にはこっちの方が多かったりします。
特に仙腸関節障害や椎間関節症候群はかなり多い。しかし、これを鑑別検査して治療する病院や治療院は探さないとないのが現状かも。
筋筋膜性疼痛症候群は仙腸関節や椎間関節、狭窄症、椎間板ヘルニアなどとともに合併してくるものといった感じ。それらの背景が実はあります。
硬い筋肉は原因ではなく何かの結果と捉えることが大切と思います。おそらく労作オンリーで、そうはなっていない。
X(何か)〜神経系などの作用〜硬い筋肉・・これを読み解く事が治療では肝心かと思います。
これに関しては、さらに複雑なのでここでは省略。
椎間関節症候群
仙腸関節障害
筋筋膜性疼痛症候群
腰椎や骨盤周辺の靭帯の問題
内臓疾患…糖尿病、帯状疱疹、下肢の動脈閉塞、大腸がん、子宮内膜症その他
このようなことを鑑別(区別)します。
ちなみに、手技療法的にアプローチする方法もかなりあります。もちろん方法があっても手術を勧めることは普通にあります。
実際には問診で
痛みの領域
増悪因子、改善因子
痛みの度合い、夜間痛の有無
発生時期、痛みの推移状況
これまでの病歴、ケガ歴
生活習慣
などを聞いていると、2つ3つにしぼられてきますので、あとはそれを確かめるために検査という感じになります。
セラピストとして知っておくべきワードとしては次のようなもの・・
・黄色靱帯の肥厚〜脊柱菅狭窄症の本態
・神経根周りや椎間孔の靭帯〜上中下経椎間孔靭帯、椎間孔内靭帯、黄色靱帯など
・神経根圧迫の仮説〜血液循環への影響、脊髄液圧の変化、直接的な圧迫の影響
・椎間板ヘルニアの痛みの仮説〜線維輪断裂の際に炎症性サイトカインが放出。脊髄神経を刺激する可能性〜この場合痛みはどのくらいで収まるか(論文いくつか)。別の可能性〜物理的な髄核の脊髄神経の圧迫による影響。別の可能性〜線維輪の脊椎洞神経は痛みを感じるがこの場合は局所痛となるだろう。
・仙棘靭帯や仙結節靭帯の関連痛〜臀部や大腿後面、下腿、踵
・多裂筋の関連痛はどこに出るか?
・仙腸関節障害の痛みの領域とその特徴は?
・腱反射をする意味は?
・馬尾症候群が出るとどう対処しなければならないか?
・腰椎棘突起を押して、棘突起先端にシャープペインと下肢痛出るのは、どのケースか?
・坐骨神経マニピュレーションをする意味は?
・尿漏れがある場合、考えられることは?どの部位のMRIが必要か?
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などなど永遠に続くのですが、このように書くとカイロプラクター風情がというふうに思われる向きもある。
整体とかだと、もっとおおらかな漠然とした感じでセッションが進む。
それはそれでなのですが、カイロプラクティックだと、もっと細かくやるんですね。
なぜなら、禁忌症とか手技適応・不適応と言う所をきっちり見定めたいからなのです。
坐骨神経痛などの状況は本人にすればとんでもなくツライんです。
それを治るか治らないかよく分からない状況で施術し続けるのはクライアントに大変失礼なんですね。
手術ギリギリの微妙な場合は、ウチなら先にそう宣言して2回ほど施術して、反応をみます。
お金も時間も精神的苦痛もすべてセラピストにかかっているわけなので



しん研良院 奈良県香芝市のカイロプラクティック
原因のよくわからない痛みや不調に対処する施術院
公式サイト www.shinken-ryouin.com